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Vol.18


英語で本を読んでみよう ~絵本から児童書まで~

はじめに

コロナでこれまでにないほど自宅で過ごす機会が増え、人との接触が減り、一人で過ごす時間が増えた方もいらっしゃるかもしれません。そんな一人の時間に、ぜひ英語で本を読んでみませんか。思いがけず素敵な本に出会い、時間を忘れてその世界に入り込めるかもしれません。素敵な絵本は、心を穏やかにしてくれるかもしれません。良書との出会いは、人生を豊かにしてくれます。今回は、本を読むことで得られるメリット、英語で本を読めるようになるためのヒント、今だから活用できるサイトをご紹介したいと思います。


読書の難しさ

 急に読書を進められても、本を読むことが苦手という方も、近年は増えているのではないでしょうか。小学校から高校にかけて、年々読書量が減少していくことは、多くの研究で指摘されています。全国の私立大学生10,832名のデータを分析した第55回学生生活実態調査(2020)によると、48%が一日の読書量が「全く無い」と回答し、9.5%が30分未満と回答しています。およそ6割の大学生は日常生活でほとんど本を読まないのです。


読書で得られる力

それでも、読書で得られる力を考えると、やはり本は読んでほしいと思います。例えば、文科省(2017)は「読書をすることが多い子供ほど、コミュニケーションスキルや礼儀・マナースキルが高い傾向にある」と報告しています。酒井(2011)は、「読書量が多ければ多いほど、言語能力は鍛えられる」、「読むことは映像と比較し情報量が少ないため、想像力を鍛える」等、脳科学の視点から読むことの利点を指摘しています。「集中力が持続する時間を長くする」(Greenfield, 2014)、「物語を通じて他者の感情を体験するので、共感力が向上し、コミュニケーション能力が高まる」(Marr, 2011)など、読書には様々な利点があるのです。


選書での躓きさえなければ

英語でも日本語でも、自分のレベルに合った本を読むということがとても大切です。つい、自分でお金を出すとなると、分厚い本を買ってしまったり、背伸びをしてレベルの高い本を買ったり、選書で失敗していることが、本が読めない原因の大半を占めると言っても過言ではありません。私自身、英語が不得意な学生時代や、アメリカ留学を経て英語力はある程度あっても、分厚いペーパーバックやベストセラーを買い込んで、数ページ読んだだけで閉じてしまった本がたくさんありました。
英語多読ということを研究し始め、指導で導入し、これまでに多くのことがわかりました。特に重要なのは、選書なのです。レベルはもちろん1冊の本の長さがとても重要です。英語母者向けのものと、学習者向けのものでは、全く読みやすさは異なります。後者の方が読みやすく、絵本は意外に難易度が高い場合もあるのです。このようにデータや知見に基づいた指導で、常葉大学の英米語学科の多くの学生は、これまでに膨大な英語の本を読み、「初めて英語で本を読んで泣いた」、「英語の本を読んで、声を出して笑った」などの経験を通し、良質の本をたくさん読んで卒業していきます。

今なら無料で使える多読サイト

 最後に、今すぐ挑戦してみたいと思ってくださった方のために、3つ無料のサイトをご紹介します。ぜひ、今すぐ、読んでみてください。

① 初級レベルの方に:StodrylineOnline
StorylineOnlineはハリウッドスターが絵本を朗読してくれているサイトです。例えば、『Trombone Shorty』は、アメリカの音楽家Troy Andrewsとトロンボーンの出会いのお話です。Angela Bassettの見事な朗読に魅了されます。ぜひ字幕を出して楽しんでください。ほかにも、『Library Lion』(日本語翻訳版:『としょかんライオン』)、『The Rainbow Fish』(日本語翻訳版:『にじいろのさかな』)等、数々の絵本の朗読が楽しめます。朗読時間の短いものから挑戦してください。

② 中級から上級レベルの方に:The Ickabog
Harry・Potterの作者のJ. K. Rowlingが、最新作の児童書、『The Ickabog』を無料公開中です。5月26日からスタートして7月10日まで毎日少しずつアップロードされます。世界の子供たちと、本が出版される前の最新作を読んでみませんか。本は11月に出版されるようですが、コロナ関係の支援として全額寄付されるそうです。出版前に、挑戦してみてはいかがでしょうか。

③ 中級から上級レベルの方に:James and the Giant Peach, with Taika and Friends
 ハリウッドスターのTaika Waititiが『チャーリーとチョコレート工場』で有名なロアルド・ダールの『James and the Giant Peach』の朗読を配信しています。コロナ関係の支援の寄付を募ることが目的です。手元に本があることがおすすめです。本を見ながら聞く(聞き読み)と、わかりやすいと思います。名優たちの名演技に魅了されます。本がない場合は、字幕を出してみると、字幕に多少の間違いはありますが、ある程度の理解の助けにはなるかと思います。


おわりに

 本を読むためには、効果的な選書が大切です。レベル、1冊の本の長さ、英語母語話者向けか学習者向けか(後者が読みやすい)を考え、最初の1冊は、無理のないものからスタートしてみてはいかがでしょうか。


*参考文献
Greenfield, S. (2012). Mind change: how digital technologies are leaving their mark on our brains. New York: Random House.
Marr, R. A. (2011). The Neural Bases of Social Cognition and Story Comprehension. The Annual Review of Psychology, 62, 103-134. doi: 10.1146/annurev-psych-120709-14540
文部科学省生涯学習政策局青少年教育課(2017)「子供の読書活動に関する現状と論点」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/040/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/15/1389071_005.pdf(2020年5月31日閲覧)
酒井邦嘉(2011).『脳を創る読書』東京:実業之日本社.
全国大学生活協同組合連合会(2020)「第55回学生生活実態調査」
https://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html(2020年5月31日閲覧)

*「今なら無料で使える多読サイト」のURL
① StorylineOnline(2020)  https://www.storylineonline.net/
② Rowling, J. K.(2020). The Ickabog. https://www.theickabog.com/read-the-story/
③ Roald Dahl HQ(2020)James and the Giant Peach, with Taika and Friends.https://www.youtube.com/user/officialroalddahl




執筆者 柴田里実
外国語学部英米語学科 准教授
(専門は応用言語学)

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