グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



Vol.21


新型コロナウイルス感染症による息切れの実際と対処法

1.新型コロナウイルス感染症による息切れの実際

 新型コロナウイルス感染症は、発症するとおよそ9割に発熱、7割に咳、4割に倦怠感が出現すると言われ、5人に一人は息切れに苦しんでいます1)。NHKが行った感染当事者への取材「新型コロナウイルス 感染者・家族 遺族の証言」2)では、息切れの苦しさがリアルに紹介されています。他の病気で入院中に感染した50代の男性は、「まず寒気、それと節々の痛みが起きました。・・・それから高熱が4日間ぐらい続きました。薬を飲んだときには38度ちょっとまで下がりましたけど、2時間ぐらいでパアッと39度以上の高熱になりまして。とにかく体の熱とダルさですね。それから息苦しさですか。呼吸がちょっとしんどい、息が続かない。プールで顔をつけて上げるみたいな感じで」と息切れの様子を答えていました。
 一方、市中感染した30代の女性は「四月の初め、お昼ごろ、のどに少しひっかかるような違和感が出始めて、のど飴をなめて様子をみていたんですけど、帰りの電車あたりから息が少し苦しい、荒くなって、駅に着いた時点でふらふらでした。家に着いた時には39度近くまで体温が上がっていて」と発症時の様子を語っています。その後、熱は下がったものの、嗅覚異常を感じたために、主治医から保健所へと紹介されて感染が判明しました。軽症と判断された女性は自宅で過ごすことを選択しました。「主人には実家に行ってもらって、私は1人で家に残りました。・・・私はまだ軽症者なので、そこまで苦しい思いはせずに済みましたが、ただただ不安でした」と、発症時ならびに自宅療養中の様子を語っています。

2.息切れへの対処法を知る意味

 首相官邸から発信された「新型コロナウイルス感染症に備えて~一人ひとりができる対策を知っておこう~」3)では、息切れ、だるさ、発熱等の症状が強く出現した場合、最寄りの保健所などに設置された「帰国者・接触者相談センター」 へすぐに相談することを勧めています(https://www.pref.shizuoka.jp/kinkyu/documents/kisetsucenter.pdf)。そして、症状が軽いために自宅での安静・療養を選択した場合でも、息切れやだるさが強くなれば、速やかに主治医等に相談して受診につなげることが指示されています。ただし、相談することで、すぐに症状が軽減するわけではありません。息切れは呼吸の苦しさを表現していますが、息切れから不安感や恐怖心を強めてパニック状態に陥ることも考えられます。息苦しさが強くなった時、医療機関での処置にたどり着くまでの間、息切れを和らげて不安感や恐怖心をコントロールすることが大切です。そこで以下では、息切れに対処するための呼吸方法や姿勢の工夫についてご紹介いたします。

図1 歩行中の呼吸法法

3.動作中の呼吸方法

 苦しくなる前から、空気を「口からはいて、鼻から吸う」と意識します。歩行では、呼吸することに歩くリズムを合わせましょう。目安は、「フー」と長く息を吐く間に4歩、「スー」と息を吸う間に2歩進みます(図1)。
ただし、無理をせず、呼吸に合わせて進める歩数を選びましょう。起き上がりや、立ち上りでも、まず、呼吸を意識してから動きはじめます。力を入れる時には、息を吐くように意識しましょう。苦しくなるまで、動作を続けてはいけません。お休みは十分に取りましょう。
(図1をクリックすると拡大表示されます)

図2 お休みする時の姿勢の工夫

4.お休みする時の姿勢

 座る場所があれば、前方のもたれられる物に、座る場所がない時は、前方の壁にもたれます(図2)。
こうして、肩甲骨まわりや首まわりの筋肉を腕の動きや頭の支持から解放し、呼吸に集中しやすくしてあげます。腕の高さや前かがみの角度は苦しくない程度に調整してください。息苦しさが落ち着いてから、動作を再開しましょう。
動作中の呼吸方法や姿勢の工夫は、一時的に息切れを和らげる方法で、治療を目的としているわけではありせん。これらの工夫でいったん息切れを落ち着かせたら、速やかに主治医等と連絡を取って適切な処置をしてもらうことを忘れないでください。
(図2をクリックすると拡大表示されます)
*参考文献
1) Wei-jie Guan, Zheng-yi Ni, Yu Hu, et al., Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China. New England Journal of Medicine; 382: 1708-1720, 2020.
2) NHK:新型コロナウイルス 感染者・家族 遺族の証言.https://www3.nhk.or.jp/news/
special/coronavirus/testimony/ (2020.5.25. 閲覧)
3)首相官邸:新型コロナウイルス感染症に備えて~一人ひとりができる対策を知っておこう.
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html.(2020.5.25. 閲覧)
執筆者 松村剛志
保健医療学部理学療法学科 准教授
(専門は生活環境支援系理学療法)

ページの先頭へ戻る