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Vol.32


マスク着用は新型コロナウイルス感染拡大防止に効果があるか

新型コロナウイルス感染症で分かっていること(2020.6.5時点)
 新型コロナウイルスは、飛沫で感染することが知られています。その感染経路は、患者の咳やくしゃみの飛沫を吸い込むことによる飛沫感染、ウイルスに汚染された環境にふれることによる接触感染が主体ですが、至近距離で相対することにより、咳やくしゃみなどがなくても、感染する可能性があることがわかっています。また無症状や軽症の人であっても、他の人に感染を広げる例があり、感染力と重症度は必ずしも一致していません。さらに感染性のピークは発症2日前であることもわかってきました。この「発症前の時期(潜伏期間)」あるいは「無症候性感染者(新型コロナウィルスに感染しているが症状が表れていない者)」の呼気に飛沫が含まれており、他の人がこの飛沫を吸い込むことで感染します。これらを考慮して、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では、「新しい生活様式」の実践例(下記参照)を示しました。

マスク着用について
 この実践例の中に「症状がなくてもマスクを着用」とあります。忽那賢志氏(感染症専門医)は、この行為の意味することとして、New England Journal of Medicine掲載された「会話によって発生する飛沫をレーザー光を当てることで可視化したものをマスクの有無で比較している動画」をあげて説明しています。実際、マスクの着用によって会話で発生した飛沫の飛散を防ぐことができているのが確認できます。
では、新型コロナウィルス感染症におけるマスクの効果はどれほどのものなのでしょう。感染者がマスク(*医療用マスク)をすれば、ウイルスが他人に広がるのをある程度防げることはがわかっています。布マスクでの効果は確かめられていません。一方、感染してない者が医療用マスクをしても、ウィルスの吸い込みを防ぐ効果は期待できないと考えられています。しかしながら、マスクを着用することで、ウィルス汚染の可能性のある手で鼻や口を触る事ができなくなるため、ウィルスの侵入を防ぐ手立てになります。この接触感染を防ぐには、布マスクでも有効です。ただし、マスクでカバーできない眼は、手で目をこすったりしないことです。
(*医療用マスク):フィルターがあり不織布で作られていて3枚重ねが主流。使い捨てで鼻の部分にノーズクリップがあり気密性がある。形状がジャバラ状で鼻から顎まで覆うことが可能。ドラッグストア、コンビニなどで販売されている。


マスクの正しい着脱の仕方
 感染拡大防止のために、マスクを正しくつけることが必要です。以下に着脱方法を簡単に記しましたので参考にしてください。
① まず表裏の確認、ジャバラが下向きになる方を外側へ向けます、ワイヤ―があるマスクはそれを上側にします。
②鼻と口の両方を確実に覆います。ワイヤーがある場合は、中央に折り目をつけます。
③ ゴム紐を耳にかけ、鼻の形に合わせて密着させるようにします。
④ ジャバラを伸ばし鼻から顎まで覆うように整えます。
⑤ 外すときはゴム紐を持って外し、マスクの表面には触らず、すぐにゴミ箱に捨てます。なぜならマスク面は汚染されている場合があるからです。またすぐに手を洗います。手がウィルスに汚染されている可能性があるからです。


マスクよもやまばなし
 マスクが日本に広まるきっかけになったのは世界的に流行したスペイン風邪(インフルエンザウィルス、1918年~1920年)でした。世界人口の約4分の1がスペイン風邪に感染し、世界中で多くの死者をだしました。日本でも流行り、統計を取り始めてから現在までの中で最も多数の死者(関東大震災の年よりも多くの死者)を出しました(下記のグラフ参照)。政府(当時は内務省衛生局)は予防対策としてポスターを新聞に掲載し、全国にも配布しました。それが「恐るべし「ハヤリカゼ」のバイキン!」のタイトルと共に「マスクをかけねば命知らず!」とマスク着用を励行するポスターです(下記にポスターを掲示)。これにより、日本では風邪にはマスク着用が必然となりました。

参考・引用文献
・厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」厚生労働省
・忽那賢志(感染症専門医)記事 https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi
・堀井光俊『マスクと日本人』(秀明大学出版)
                            
執筆者 林原好美
健康プロデュース学部健康栄養学科 准教授
(専門は公衆衛生学)

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