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目的


「多言語レシテーション(暗唱・朗誦)大会」は、古今東西の詩歌を詠みあげて、その詩歌を生み出したその時その場所を、2024年の今ここ静岡に再現することを目的としています。大会で登場する詩歌はいずれも、それぞれの言語が持つ時間の長さと空間の広がりとを私たちに伝えてくるでしょう。かつて本学学長だった西頭德三の次の文章を読むと、大会の目的がより良く理解できるに違いありません。

(2016年度大会パンフレットの巻頭言 (第3回大会) より再掲)(別ウィンドウで開きます)

私の朗唱体験
2016年11月
常葉大学長 西頭德三

 なにげなく関わったことが、だいぶ後になって大変重要な意味があることに気付く場合がある。かつて私が北陸の大学にいたとき、地元の「万葉朗唱の会」に参加した。高岡市は万葉歌人・大伴家持が746年、越中国司として赴任し、5年間に326首も詠んだ地である。

 この催しは只事ではなかった。正式には、『万葉集全巻20巻朗唱の会』と云う。全国から2,000人が参集して、三昼夜連続してリレー方式で東歌・防人歌を含む約4,500首を朗唱し切るという、地元の歴史・文化に真正面から取り組む企画であった。

 私の出番は千秋楽に近い三日目の晩8時頃だった。万葉衣装をまとい、松の巨木が覆い被さる古城公園の濠に浮かぶ舞台に立ち、力一杯万葉歌を朗唱した。拍手が送られたが、つるべ落としの秋の暗闇の中で聴衆の顔は見えない。一瞬、千二百年前の越中国府の秋夜に佇んでいるように想えた。

 その後に常葉にきて、外国語学部から、「レシテーション(朗唱・暗誦)」という言葉を教わった。確かに民族の諸言語は永い歴史と多様な文化交流の中で醸成され、進化したものである。もしその民族固有の「時空」を少しでも追体験できれば、最高の語学教育になるだろう。中でも朗唱は唯一の方法かも知れない。

 最後に、北陸の万葉詩歌を生んだ「時空」を丸ごと実体験した成果をもうひとつ披露する。

「朝床に聞けば遥けし射水川 朝漕ぎしつつ唱う舟人」
 射水川とは現在富山湾に注ぐ小矢部川を指すが、家持が朝方舟人の唱声を聞いた国府から40km上流に私の故郷がある。あの朗唱体験のお陰で、この万葉歌がドカンと私の胸に落ちた。もう忘れることはない。
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2024年度巻頭言(第11回大会)
(こちらからも巻頭言をご覧いただけます)


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