仮設居住者の意識に格差/稲葉光彦教授

本学保育学部保育学科の稲葉光彦教授が、仮設住宅での生活状況等に関する意識調査の結果を発表しました。
以下、富士ニュース新聞掲載記事です。

常葉大学富士キャンパス(富士市大淵)の稲葉光彦副学長は東日本大震災の「仮設住宅での生活状況等に関する意識調査(アンケート)」の結果を11日に発表した。
東日本大震災の復興の遅れが指摘されている中で、仮設住宅での課題を把握し、今後の復興に役立てる狙い。
仮設住宅での生活について尋ねた項目では「やや満足している」43%、「満足している」7%で、「やや不満」29%、「不満」20%で意識が分かれた。
稲葉副学長は「仮設住宅者の中でも良い・悪いと意識が大きく格差が生じている」と分析。特に山間部では交通の便が悪く、十分な医療を受けられないことに不満を抱えているようだ。
「現在、地域での復興は進んでいると思いますか」という項目に対しては「遅れている」が41%、「まったく遅れている」が35%、「やや遅れている」が10%。「やや進んでいる」8%、「進んでいる」1%だった。
ほとんどが復興は遅れていると感じている背景に「がれきの撤去は進められているが、復興への具体的な計画が示されていないことや、復興予算がどの程度あるのか知られていないことが要因にある」という。
「仮設住宅からの移転を考えている場合の今後の居住」については「高台に移転したい」44%、「近くに高層住宅を建ててもらい入居したい」16%、「わからない」11%だった。
調査を通じ稲葉副学長は「避難生活が長期化し、これまで共通の悩みを共有していた被災者が、将来にかかわる個別の悩みを持つようになり、人間関係が複雑化してきている」と指摘。
背景には経済的理由で移転できる人とできない人に分かれている一方で、移転先の不足など、物理的な要因により仮設住宅にとどまるという現状があり、行政が具体的なビジョンを示すことが重要だとした。
調査対象は仮設住宅で暮らす592世帯。期間は今年2月21日から25日まで。地域は岩手県の宮古市、山田町、大槌町、大船渡市、陸前高田市と、宮城県の気仙沼市、南三陸町、石巻市、女川町、名取市の6市4町に及んだ。
調査結果は復興庁と国交省、調査を実施した自治体に報告するという。
(2013年4月13日 富士ニュース掲載)