「いのちを守る 防災しずおか」(静岡新聞)に掲載されました/池田浩敬教授
本学社会環境学部長の池田浩敬教授の記事が、静岡新聞に掲載されました。
以下、3月8日(日曜日)静岡新聞の記事です。
津波避難に“選択”を。
東日本大震災から4年近くが経過した。津波避難計画について県内の行政や住民の方々と話し合う中で、計画策定の難しさを改めて痛感している。
例えば住宅地において、地震が平日昼間に起こったとすると、頼りになる働き手や就学中の若者の世代は家や地域にはおらず、足の不自由な高齢者や障害者など避難行動要支援者の避難を助ける側の人員不足が強く懸念される。一方で、夜間に起こった場合は、要支援者を助ける側の家族がそろっている半面、就寝中で避難の開始が遅れたり、地震に伴う停電により暗闇の中での避難といった悪条件の中での避難を強いられる。
また、古い耐震基準で建てられた建物は、十分な耐震性が確保されていることが確認できないため、行政としては津波避難ビルに指定していない。しかし、そこに住む人達の中には敢えてリスクを冒して避難するより上階へ避難することを選択する人も多い。
東日本大震災の際、石巻市などでは自宅の2階に避難して助かった人がいる一方で、2階に避難しても家ごと流されて亡くなった方もいる。実際に次に来る地震がどういう時間帯に発生し、揺れの強さがどの程度で、自分の家や周りのビルが避難先に使えるのか否か、津波の浸水深はどの程度になるのか、といったことは「想定結果」はあっても多分に不確実性を有している。条件が違えば、逃げ方も違ってくる。
事前に耐震性が確認されていなくても揺れた後に無事であれば、当該建物の上階への避難は合理的であるが、無事である保証はない。避難計画に“決め打ち”は危険である。柔軟な発想に基づき起こりうる状況を想定し、地域でよく話し合いそれらに対応した複数の“選択肢”を持っておくことが重要である。