「いのちを守る 防災しずおか」(静岡新聞)に掲載されました/池田浩敬教授
本学社会環境学部長の池田浩敬教授の記事が静岡新聞に掲載されました。
以下、12月13日(日曜日)静岡新聞の記事です。
避難開始時間を早める
1944年12月7日の東南海地震の発生に因(ちな)み、6日には県内の各地で津波避難訓練などが実施された。南海トラフの地震による津波被害が想定されている本県では、津波を起こすと想定される断層が駿河湾の中まで伸びており、地震発生から津波到達までの時間が東日本大震災のときの東北沿岸部のケースに比べ圧倒的に短い。西伊豆の沿岸部では早いところでは揺れ始めてから10分程度で浸水する地区もある。
そうなると、避難先や避難経路も重要であることは間違いないが、その前に、一刻も早く逃げ始めることが必要不可欠となる。避難開始が遅れれば、逃げ始める前に津波が来てしまう危険性がある。
しかし、実際には夜中の寝入っているときに地震が発生し、停電で真っ暗な状態の中で、揺れが収まった直後に避難を開始するのは困難を極める。しかも、東日本大震災クラスの規模の地震であれば、5分近くも揺れ続けることが想定されている。
通常の避難訓練は「昼間に自宅をスタートして避難先まで逃げる」という行動を模擬的に行うが、本当は、例えば冬の夜間、布団の中で寝ている状態から、暗闇の中、防寒着を着て靴を履き、避難を開始するまでにかかる時間をいかに短縮するか、という訓練も必要である。
西伊豆の沿岸部を対象に私の研究室で行った避難シミュレーションでは、揺れ始めてから5分に避難を開始すると設定しても逃げ遅れが生じ、そうした地区では避難開始時間がさらに5分遅れると、津波に追いつかれる危険性のある人数が地区によっては5~10倍以上になり、実人数で40~80人以上増加するところもある。揺れが収まってから逃げ始めるまでの時間をいかに短縮できるかが、避難の成否を左右する。