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「いじめ問題の難しさ」


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みなさんは、学校現場でいじめがどのくらいの頻度で起こっているかご存知でしょうか?

文部科学省の調査によると、いじめの認知件数は2013年のいじめ防止対策推進法制定後から右肩上がりで増え、毎年のように過去最多を更新しています。しかし、認知件数は学校の先生がその行為をいじめであるとした数のため、この調査からは、いじめがどのくらい起こっているのか判断することはできません。

いじめ防止対策推進法は、いじめを被害者の主観に基づいて定義しています。いじめの実態を把握するためには、子供たちに、いじめに該当するような経験を尋ねる必要があります。

私の研究グループでは、A市の協力のもと、小5〜中3の全児童生徒を対象に、上記経験についての調査を行っています(図1)。A市の実態として、いじめに該当するような経験は、中学校で毎年30%程度、小学校で毎年45%程度の割合で起きており、2021年度の全国のいじめ認知率と比較すると、中学校で約10倍、小学校で約6倍多い結果となっています。

いじめ問題の難しさは、このいじめに該当するような経験の多さにあります。

いじめは、軽微で些細な出来事が重大な事態につながった過去の事例を踏まえ、網羅的に認知し対応することが求められていますが、今よりも6〜10倍の件数に対応することは、学校現場の実情を考えると不可能に近いと考えられます。

では、どうしたらいいのでしょうか?

A市の実態調査では、週に何度も被害にあっている「高頻度被害者」が小・中問わず7%前後いることもわかっています。この「高頻度被害者」の捕捉を認知の目安にすることが考えられます。それでも、重大な事態につながるいじめをすべて把握できるわけではありません。

そこで、現在、どんな条件が揃うといじめの頻度が高くなるのか、また心理的なダメージが増えるのかなど、重大な事態につながる可能性のある要因を調べ、早期に適切に介入することを目的としたリスクアセスメントツールの開発をすすめています。

私の専門である教育心理学は、学校現場で起こる様々な問題を心理学的に解決していくことを目的のひとつとしています。心理学に興味のあるみなさん、子どもたちの心の安心・安全につながる研究を一緒にしてみませんか。

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