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利便性の高い化学物質を使い続けるために必要なこと


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現代の私たちの便利で快適な生活は、多くの化学物質の利用に支えられています。例えば、風邪をひいた時に服用する医薬品、毎日使う化粧品やシャンプーなどの身体ケア製品、農作物を安定して収穫するために使用する農薬、ペットボトルや化学繊維の衣服などのプラスチック製品など、私たちの生活に欠かすことができない多くの製品の有効成分や素材は、そのほとんどが人工的に合成された化学物質です。

それら化学物質は利便性だけでなく、使用量や使用方法によってはヒトや環境にリスクをもたらす可能性もあります。最近では、私たちが使用・廃棄したプラスチック製品の一部が劣化・微細化することで、マイクロプラスチックと呼ばれる小さい粒子が生じ、環境中に残留することや、生態系への影響が世界的に懸念されています。一方、プラスチックは緊急車両や情報機器の部品として、またディスポーザブル(使い捨て)の医療器具や衛生用品、食品容器の素材として欠かせません。プラスチックが使用できないと不便になるだけでなく、健康や衛生環境の維持も難しくなってしまいます。このように、現代においては利便性の高い化学物質を使用できなくなることも、リスクとなりえることが難しい点といえます。もちろん、過剰な使用は避けるべきですが、それでは、どこからが過剰といえるのでしょうか。

ゼミの学生と海岸で調査をしている様子

そこで、化学分析や環境調査によって得られるデータが必要になります。環境中にどれくらいの量(濃度)で対象物質が存在するのかが分かれば、それがヒトや生態系に影響を与える可能性があるのか、またはないのかをデータを示して説明することができます。また、そのデータがあることで、便利な化学物質の利用を続けながら、環境に影響をあたえないような使用量や使用方法を議論することができるようになります。
このような調査や研究から得られるデータは、化学物質の影の部分を明らかにする点から、ネガティブなデータと思われるかもしれません。しかし、利便性が高い化学物質の利用を継続し、なおかつ環境・健康リスクが低い社会を目指すためには必要なデータであり、長期的に見ると持続可能な社会の形成に欠かせないと私は考えています。

三保の海岸で採取したプラスチック片とプラごみ

三保の海岸で採取したプラスチック片とプラごみ


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