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「民法」の内と外


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わたしが担当する民法は、「民(たみ)の法」との名を持ちますが、社会経済活動の基本ルールとして、個人(民法3条。以下条文のみ)だけでなく企業などの法人(33条)にも適用されます。個人の罪と刑罰を定める刑法との違いの1つですが、私自身、企業における法務・経営企画の仕事のなかで、一貫して民法に関わってきました。
経済活動の基本単位は、我々が毎日経験している売買(555条)や賃貸借(601条)などの契約です。「契約自由の原則(521条)」が基本であり、我々はいちいち契約書を結ばずとも、またすべてを契約書に記さなくとも契約を結んでいます。それはもし契約相手とトラブルになったとしても、経済活動のルールブックとも言える民法が存在しているからだといえるでしょう。契約違反があれば「債務不履行」として損害賠償(415条)の対象となりますし、契約相手ではない見ず知らずの相手と交通事故などの突発事象がおきれば、「不法行為」として損害賠償(709条)の問題となります。

「契約」に着目して執筆した民法の
「内」の不動産・相続にも関わる教科書


しかし、すべてが条文に書かれているわけではなく、事案に応じた条文の解釈が分かれる場合もあります。明治期に制定された民法は、当時の諸外国の民法を参考としたものであり、条文ごとにその淵源が異なります。研究の立場からは、そのような比較法の観点から検討を行ったり、これまでの膨大な裁判例を類型化して分析したりしていきます。裁判所はそのような研究成果も参考として具体的事件を検討して判決を下しますし、さらに判決が研究の対象となっていきます。それらの成果がまとまれば、民法の一部が改定されることとなりますが、本年度からは契約に関する多くの条文が改正・施行されました。
全五編の民法のうち第4・5編は、親族間の問題を規律し、相続のルールを定めるものですが、相続においては、最も価値ある財産として土地や建物などの不動産がクローズアップされてきます。核家族・高齢化社会などが背景となっている所有者不明土地・空き家は、現代日本社会が抱える問題の一断面であり、相続に関する民法の条文、不動産登記法改正が検討されており、私の専門領域と重なってくる問題です。

このように民法の「内」には多様な問題と研究対象が存在します。一方、グローバル化が進展している現代、民法に関連する問題は「外」にも拡がってきています。企業間の国際取引においてトラブルが発生した場合にどの国の民法に拠って解決を図るべきか、という問題ですが、いっそのこと、国際取引において標準適用される世界共通の民法をつくったらどうか、ということで「UNIDROIT国際商事契約原則」が策定されています。国際契約を結ぶ企業は、万一トラブルがおきた際の「準拠法」として契約時にUNIDROIT原則を選択することが可能となっており、諸外国の訴訟や仲裁においてUNIDROIT原則に言及されるものも出てきています。2010年版からその公式日本語訳に携わっていますが、そこでは、自身のビジネス経験として海外企業の買収、情報通信分野における国連専門機関での標準化作業が活きています。

自身の実務経験も活かした「民法」の内と外におけるこれらの研究成果は、地域の皆様への「常葉大学公開講座」(今年度は、オンラインにて実施)において、また本学学生諸君への専門ゼミ教育において、これからも共有させていただく所存です。

常葉大学公開講座(Youtubeオンライン)

常葉大学公開講座(Youtubeオンライン)(別ウィンドウで開きます)


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