グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



図書館情報学のはなし


ホーム >  教員コラム >  図書館情報学のはなし

韓国・ソウルのスターフィールド・コエックスモール内にあるピョルマダン図書館にて(筆者によって2019年8月撮影)

インタラクティブ情報検索システムの評価:ユーザの視点を取り入れる手法 / Diane Kelly著;上保秀夫, 神門典子訳者代表;阿部明典 [ほか] 訳. (東京:丸善出版,2013)

「図書館情報学って一体何をする学問ですか?」とよく聞かれます。そこで、「図書の検索システムについても研究しているんですよ」と答えると、「ああ、プログラミングの勉強ですか、システム開発のことなのですね。」と妙に納得され、そうとも、違うとも言えない、もどかしい気持ちになりますが、実は、最も困る致命的な質問が、「図書館のシステムって本当に必要なんですか?Google検索でダメですか?」というものです。以前、図書館情報学の領域では大変高名なマルシア・ベイツ先生が、「図書館情報学の展望について」というテーマでご講演された際に、質疑応答のなかで、ある博士課程の学生が、「自分はありとあらゆる情報をGoogle検索で探すので図書館には行かない」と前置きをしたうえで、図書館のオンライン蔵書目録(OPAC)を含む図書館サービスの不要論を唱え、会場中が恐々と静まり返ってしまったことがありました。確かに、今は多くの情報が自宅のパソコンで必要な情報を簡単に検索し入手できるため、わざわざ図書館に出向きOPACを使って図書の情報を検索する必要などない、というのも一理ある気もします。
情報の検索システムを、それを利用する「人」の立場に立って考えてみましょう。人は、自分がおかれている環境や状況に応じて、それに適した情報を求めます。したがって、「右から左」といったように情報を機械的に受け取り満足するわけではなく、その時々の思惑や動機、好みや感情など、細やかな文脈(コンテキスト)対して絶妙にマッチした情報を受け取ったときに、人ははじめて満足するのです。そこに目を向けたのが、グーグルという会社で、人の感じ方や前後の文脈、検索内容の傾向や好みなどさまざまな人間的な要素を考慮したアルゴリズム(計算方法)を搭載した検索エンジンを開発しました。先の学生が唱えた図書館不要論というアンチテーゼは、むしろ、図書館の検索システムは、Googleの検索のアルゴリズムと比べて、まだまだ細やかな人間的な要素にしっかり応えきれてはいない、だから改善の余地がある、という前向きな問題提起として受け取るべきなのかもしれません。例えばこのようなことを、あれやこれやと考えるのも、図書館情報学の楽しみの一つです。

ページの先頭へ戻る