最近、持続可能な開発課題（SDGs）という言葉が一般にも広く知られるようになってきました。街角のポスターやテレビ番組などで目にする機会も多いのではないでしょうか。

ではなぜ「持続可能」であるべきなのでしょうか。将来の人々によりよい社会を引き継ぐためというのがその理由であり、多くの人はこの理想的な考えを否定はしないと思いますが、どれくらいの人がこれを真剣に捉えているでしょうか。
実際には現代の我々の生活は「持続可能」でなくても成り立ちます。不確かな未来のことなど考えず、手元にある金銭や資源を潤沢に使い、今を享楽的に生きた方が楽しく、豊かな生活ができます。
この理想と現実のギャップが、持続可能な社会への変化を拒む要因になり、SDGs達成を遠ざける一因になっています。

このような現状に対し、将来世代にも配慮した持続可能な意思決定や行動を生み出す「フューチャー・デザイン」という取り組みが広がりつつあります。
フューチャー・デザインでは、持続可能社会の実現に向けた行動を検討する場において、将来の社会の形とその中で自分が生活していることをイメージし、将来人になりきった立場から現在取り組むべきことを検討します。そのように視点を変えるだけで、普段の視点ではおぼろげにしかイメージできなかった将来社会のことを自分ごととして身近に捉えられるようになり、日常の延長では考えつかなかった独創的なアイディアが生まれることや、難しい課題に積極的に挑戦する姿勢が生まれることわかってきています。
この時に重要なのは、「将来のために我慢をする」感覚ではなく、明るく前向きな気持ちで持続可能な選択をできることです。「フューチャー・デザイン」には特別な装置や技術は必要なく、気軽に取り組むことができる点も魅力です。
大阪大学や高知工科大学を中心に研究が進められてきたこの概念は、最近では大阪府吹田市や京都府京都市、岩手県矢巾町などの様々な自治体で計画や施策の策定に応用され始めており、今後もさらに取り組みは広がっていくと思われます。

持続可能社会の実現は非常に困難な課題ですが、将来人になりきって考えてみるだけで思わぬ妙案が浮かぶかもしれません。まずは皆さんも、将来の社会の姿や、そこに住む人が何をして何を考え生きるのかをイメージしてみることから試してみてはいかがでしょうか。