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複合的な隣国関係をどのように理解するか


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私は留学生として来日しましたが、今は日本を拠点とする研究者として日韓関係や東アジア国際関係、韓国の政治・外交を研究しています。特に、複合的な隣国関係をどのように理解すべきかについて、日韓の架け橋としての自分の役割を問いつつ、研究を進めています。

日韓関係といえば、歴史認識問題や領土問題にもっぱら関心が集中し、両国の相違ばかりに焦点が置かれます。そして、両国間の類似性に対して体系的な関心を持つ人は少ないのが現状です。歴史問題を避けて通ることは出来ないという意見を否定する訳ではありませんが、そればかりに偏った課題設定が、むしろ両国の現状を互いに深く理解するのを妨げてしまっているのではないかという問題意識を持っています。そこで、グローバル社会という視点から日韓両国の立ち位置に注目し、互いに協力可能な領域を見出す外交努力がこれまでにどのように行われてきたのかに研究の重点をおいてきました(①)。

世界的にみれば、隣国関係で困難を覚えている国は、日韓以外にも非常に沢山あります。隣国関係にある国同士は、歴史的なしがらみがあるだけでなく、国益がぶつかる部分が多く、競争相手にもなりやすいと言えます。そのため隣国関係は難易度の高い問題ではありますが、その一方で、隣国であるからこそ、近さを活かした結びつきが可能であり、共通利益をもとに協力関係を構築できる可能性を秘めています(②)。隣国関係の複合的な側面は、より広い地域の国際関係を理解する土台にもなりうると思います。言いかえれば、隣国関係は「応用問題」へとつながる「練習問題」のようなものだと言えるでしょう。

こうした問題意識をもとに研究を進めるかたわら、日韓学生交流プログラムに長年携わってきました。日韓の学生が米国や台湾の学生とともに「少子高齢化」や「外国人労働者受け入れ」、「安全保障」、「災害と安全」など、それぞれの国が共通して抱えている課題をPBL(Problem-Based Learning、問題基盤型学習)とTBL(Team-Bases Learning、チーム基盤型学習)で協働しながら学び合う場を設けました(③)。社会的共通課題の多様な側面を日韓の学生がともに学習しながら、歴史認識問題では見えていなかった両国の複合的な側面に気づくことができました。

日韓関係は歴史的なしがらみによって政治的摩擦が続いていますが、経済や安全保障の領域において両国は密接な協力関係を構築してきており、共通課題においても協力可能な分野が多く存在しています。学生の皆さんと、複雑かつ複合的な隣国関係という練習問題を解きながら、グローバルな視野を養っていければと思います。


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